住のうたー家・庵・宿(8/14)
秋の夜は山田の庵(いほ)にいなづまの光のみこそもりあかしけれ
あばれたる草の庵のさびしさは風よりほかにとふ人ぞなき
*あばれたる: 荒れ果てた。
諸共(もろとも)にかげをならぶる人もあれや月の洩りくる笹の庵に
さびしさに堪へたる人のまたもあれな庵をならべむ冬の山ざと
まばらなるしばのいほりに旅寝して時雨にぬるるさ夜衣かな
稲葉ふく風にまかせてすむ庵は月ぞまことにもりあかしける
*「稲葉に吹く風に鳴子を任せて住む田の仮の庵では、月がまことに番をするかのように洩れ入り、夜を明かしてしまったわ。」