天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

住のうたー家・庵・宿(9/14)

  わが庵は小倉の山の近ければうき世をしかとなかぬ日ぞなき

               新勅撰集・八条院高倉

*しかと: はっきりと。「鹿と」を掛ける。

「私の住む庵は小倉山が近いので、憂き世を悲しみ鹿とともに泣かない日はない。」

 

  長閑なる日影はもれて笹竹に籠れる庵も春は来にけり

                     上田秋成

  我が庵(いほ)は松原つづき海近く富士の高嶺を軒端にぞ見る

                     太田道灌

  吾が庵をいづくにせむと思ひつつ見つつもとほる天(あめ)の花原

                    伊藤左千夫

*もとほる: めぐる、徘徊する。

 

  人皆の箱根伊香保と遊ぶ日を庵に籠りて蠅殺すわれは

                     正岡子規

  庵かこむ高槻の葉に雨多し清(すが)しさ過ぎて寒き日もあらむ

                     島木赤彦

*槻の木はケヤキの古名。したがって高槻は、背の高いケヤキのこと。

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高槻の葉