住のうたー家・庵・宿(14/14)
いまはわれ吉野のやまの花をこそ宿のものとも見るべかりけれ
*「今や私は、あこがれていた吉野の山の花を、わが家のものとして見るべきなのだろう。」
住む人もあるかなきかの宿ならし葦間の月のもるにまかせて
新古今集・源 経信
いづくにか今宵は宿をかり衣ひもゆふぐれの嶺のあらしに
*「今晩、どこかに泊まる宿をかりなくては。夕暮れの峯で嵐にあってしまった。」
霞かは花うぐひすにとぢられて春にこもれる宿のあけぼの
拾遺愚草・藤原定家
散る花のふるさととこそなりにけれわが住む宿の春の暮がた
新勅撰集・慈円
たれをまつ花ともなくてしづけきは老にかなへるあさぢふのやど
木下長嘯子
*あさぢふのやど: 浅茅が一面に生えて、荒れ果てた住まい。
心ある人に一夜(ひとよ)の宿かりてなるるも悲し明日のふるさと
契沖