住のうたー窓・戸・玄関(2/5)
よき月と
賞めて通れる人のあり、
よき月夜かと窓を見上ぐる 渡辺順三
遠く来てひとりめざむる朝はよし千島に向ふ窓あけはなつ
橋本徳寿
カーテンを引かざる窓のただ暗く寒潮(さむじほ)の音も今夜(こよひ)きこえよ
柴生田稔
くれなゐにネオン顕ちくる夕まぐれひと日の窓を鉄もて鎖す
千代国一
*結句がなんとも仰々しい。窓に鉄のつっかい棒を入れたのだろうか?
夜にひらく窓より霧は流れ入り長き不在を截る紙ナイフ
川口常孝
*下句に状況が分かりにくい。長き不在を書いた紙を窓に貼ってあったのか、その紙を紙ナイフで切りとった、ということか。
陸橋にとなれる窓に顔出でて坂のぼり来しわれを迎ふる
玉城 徹
かがやける藤の青葉の一揺れや音やはらかく窓やはらかく
中村純一
劇薬をはかりし秤(はかり)と硝子器と華麗なり八月の窓に見しもの
真鍋美恵子
*劇薬をはかっている室内が窓に見えた、という。どうして劇薬と分かったのだろう?
紫陽花のむらがる窓に重なりて大き地球儀の球は冷えゐつ
葛原妙子
わが眠りひと夜守りゐしガラス窓明方にびつしり汗を噴きゐる
五喜田正巳