天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

血のうた(1/5)

 血とは、➀動物の血管内を流れる体液。血液。 ➁血縁。血統。血筋。 ➂人のもつ感情や思いやり。 といった三種の意味を有する。

  

  くれなゐの血潮もあかずみむろやま色にいづべきことのはもがな

                     新勅撰集・寂蓮

*みむろやま: 奈良県斑鳩町竜田川下流西岸の丘陵をさす。紅葉の名所。歌枕。

 

  血を咯(は)きやすき命をもちて人しかなし雨降りて寒さ遽(にわか)にかへる

                       大隈長次郎

  カイゼルを憎める人も赤き血にその手を染めり咀(のろ)はれしかな  

                       与謝野晶子

*カイゼル: ドイツ皇帝の称号。日本では、特にウィルヘルム二世をさすことが多い。

 

  やは肌のあつき血潮にふれも見でさびしからずや道を説く君

                       与謝野晶子

  血を喀(は)きてのちのさびしさ外(と)の面(も)にはしとしととして雨の音すも

                        松倉米吉

  宿の者醒めはせずかと秘むれども喉にせき来る血しほのつらなり

                        松倉米吉

*松倉米吉: 明治-大正時代の歌人。高等小学校を中退し,上京して鍍金(めっき)工場などではたらきながら、労働者の生活体験をうたい貧窮のなか肺病を病み、大正8年死去。享年25。

 

  よろよろとふらふらとモッコ担いゆく友は道べに血へど喀きつつ

                        森川平八

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モッコ