天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

血のうた(2/5)

  授業料未納を苦にせし青年は血を売りつくしつひには喀けり

                        原 三郎

  祖父父母とつぎつぎ承(う)けて伝へたる血に疲れありとつぶやく吾子は

                       五島美代子

  次々にかっさらはれてゆく犠牲者の血潮の中から守る組合旗

                        坪野哲久

*坪野哲久: 「アララギ」の島木赤彦に師事したが、『ポトナム』同人を経て「無産者歌人連盟」「プロレタリア歌人同盟」などで渡辺順三らとともにプロレタリア短歌運動を展開した。

 

  プラカード伏せて守られて行く列に吾が血は引きて屋上にあり

                        近藤芳美

  警棒の血をあびすくむものの背後今も群衆の曖昧な笑い

                        近藤芳美

*近藤芳美: 一兵士としての戦争体験と、知識人の良心を核に、時代の証人として、歴史や現実の動きに鋭い視線を注いでいる。(「日本大百科全書」参照)

 

  珈琲のあまきひとつき飲みたしとむすべる日記も血まみれなりき

                        山本友一

*ひとつき: 一杯。

 

  さみしくもつめたきわが肩と思ひしに血液垂れゐて黒しあかとき

                        森岡貞香

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警棒