天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

血のうた(4/5)

  火の剣のごとき夕陽に跳躍の青年一瞬血ぬられて飛ぶ

                        春日井建

  磔刑の絵を血ばしりて眺めをるときわが悪相も輝かむか

                        春日井建

  まざまざと佐佐木信綱を血に継げば凄惨にさらに研ぎゆく視線

                       佐佐木幸綱

  鮮血の日日に生きしかその狭き視圏のなかの巨いなる墳(ふん)

                        太田一郎

*太田一郎: 経済学者、歌人、評論家。3歳で父を失う。1945年空襲で家を焼かれ、戦後肺結核を発病し清瀬療養所に入る。退院後1952年東京大学経済学部卒業、国民金融公庫に入る。

 

  夕闇の桜花の記憶と重なりてはじめて聴きし日の君が血のおと

                        河野裕子

  こぼれたる鼻血ひらきて花となるわが青年期終りゆくかな

                        玉井清弘

  とほき日のわが出来事や 紙の上にふとあたたかく鼻血咲(ひら)きぬ

                        小池 光

 

f:id:amanokakeru:20201029063909j:plain

磔刑の絵