カレーを詠む
今年の「短歌人」十月号に、小池光さんの「仰げば尊し」五首があるが、その中に次の一首を見つけた。奥様を亡くされて独り暮らしの小池さんの現状が身に染みてわかる作品。
横須賀の海軍カレーあたためてひとり食ふべき夜とはなりぬ
小池 光
今まで取り上げた「食のうた」では、カレー(ライス)の歌は見ていなかったので、あらためて調べてみると以下のような作品があった。
辛きカレーを喰うカウンターのおとこがたしかに大きく見えぬ
高瀬一誌
口疼(ひび)き汗噴くほどのカレー欲り炒りしがあはれ髪も香に染む
蒔田さくら子
「今日は笑わないから」という友のいて昼のカレーにコロッケ落とす
梅内美華子
奇しくも高瀬、蒔田、小池の三氏は、「短歌人」を牽引した歌人であった。
小池さんの歌にある「横須賀海軍カレー」は、私の好む食材であり、盆暮れのご挨拶には、時々利用する品物であるが、以下のような歴史をもつ(WEBから)。
明治初期に日本海軍で蔓延していた 脚気の予防法を確立したのは後に海軍 軍医総監となる高木兼寛でした。その 時に採用されたカレー風味のシチュー に小麦粉でとろみをつけたメニューが 現在のカレーライスの原型になった。海軍とともに歩んできた街・横須賀。横須賀はカレー発信の地なのだ。
明治41年に発行された「海軍割烹術参考書」には日本海軍で提供されていた軍隊食のレシピが記されており、 カレーライスの作り方についても記載がある。当時のレシピをもとに現代に復元したカレーが「よこすか海軍カレー」。