手紙のうた(1/4)
日本では古くは木簡を文字による通信伝達の手段として用いた。平安時代になると、紙漉きが各地で行われるようになり、都の平安貴族の間では木の板に代わって和紙に文字を書いて送ることが盛んに行われるようになった。(百科事典)
唐衣つまとは君になりはてむ結びを留めよ吾子が玉づさ
*唐衣: 衣服に関連する言葉にかかる枕詞。この歌では、褄(つま=妻をかける)。
玉づさ: 手紙、消息。 「たまあずさ」が音変化したもの。古くは便りを伝える使者は梓 (あずさ) の杖を持っていたところから、使者、使いを意味した。(百科事典)
一首の解釈は難しい!
七夕のとわたる舟のかぢの葉に幾秋かきつ露のたまづさ
*「彦星が河門(かわと)をわたる舟の梶ではないが、梶の葉にもう幾秋書いてたむけたことであろう、露で筆を染めた懸想文を」
春雨にぬれてとどけば見すまじき手紙の糊もはげて居にけり
長塚 節
この手紙赤き切手をはるにさへこころときめく哀しきゆふべ
今は人の便り待つべき時ならず吾子に書きやる片仮名の手紙
三ヶ島葭子
ひとひらの手紙を封じをはりしが水とパンあるゆふぐれありき
葛原妙子
米兵の愛の手紙を訳しやる女の好む言葉まじへて
滝沢 亘
妻の手紙よみつつおもふ互(かた)みなる吾の手紙も悲しかるべし
佐藤佐太郎