天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

あの世のこと(6/6)

 黄泉は、地面の下にあり、死者が行くといわれる所。冥土、よみじ。なお当然であるが、黄泉の国の具体的な情景は、おとぎ話や伝説以外は不明である。歌の内容に出てくることもほとんど無い。

 

  若ければ道行き知らじ幣(まひ)はせむ黄泉(したへ)の使(つかひ)負(お)ひて通らせ

                  万葉集山上憶良

*「我がはまだ幼く、あの世への道を知らないだろう。たっぷりと贈り物は差し上げます。冥途の使いよ、我が子をどうか背負って行ってやって下さい。」

 

  追ひ及(し)きてとりかへすべき物ならばよもつひら坂道はなくとも

                      香川景樹

*よもつひら坂(黄泉比良坂): 黄泉の国と現世との境にあるという坂。

 

  呼ばへども答はなくて黄泉(よみ)の島氷の扉かたくとざしぬ

                      四賀光子

  黄泉(よみ)の国にぢぢごばばごは言葉なく相向ひつつ睦みゐますか

                      宮 柊二

  一夜寝て身罷りし母かるがると黄泉比良坂越えて行きしか

                      中村重義

 

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黄泉比良坂 (WEBから)