虫のうた(5/5)
黄葉に間ある木の葉を蝕める虫をひそかに鳥がきて食む
筒井早苗
授かりし命と思へ石仏を日がな這ひゐる虫は小さく
酒井京子
*上の初句二句は自分への言い聞かせである。
永遠といふ地点まで這ひゆくか薔薇より落ちし十ミリの虫
木村光子
*上句に作者の情念が込められている。読者は考え込んでしまう。
何の虫か生きて木下に垂れ下がるさびしきものの今を目守りつ
ぬきわれいこ
うづくまるわたしの耳のうしろには声にならうとする虫のこゑ
寺島博子
*声: 人や動物が発声器官を使って出す音。虫の場合には、羽や足をこすり合わせて出す音も意味する。下句の「声にならうとする」とは、一定のリズムになる前の音をさすのであろう。
灯を消せば声たかき虫天井にゐて緑なり灯を消して去る
石川不二子