天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

師走、年の暮(2/2)

  木の葉なき空しき枝に年暮れてまた芽ぐむべき春ぞ近づく

                    玉葉集・京極為兼

  かづらきや雲を木(こ)高(だか)み雪しろし哀(あはれ)と思ふ年の暮かな

                    金槐集・源 実朝

*かづらき: 葛城。奈良県中西部、葛城山東麓一帯の呼称。

 

  しづかなる心をもちてわびずみの師走の襖妹とつくらふ

                        吉井 勇

  堂塔のまうへの空も暮れゆきて寒き師走の古雲がをる

                       前川佐美雄

  師走のまちをいそぎ来(きた)りてをとめらに恋愛の小説をひとつ説きたり

                        木俣 修

*作者は少女たち相手のセミナーか講座をもっていたのだろう。

 

  まつたく師走ドックより来る打鋲の音港の潮(しほ)を刺すごとくにて

                        木俣 修

  くもり来し師走の空を雁の列低きより高きにうつりわたりゆく

                        長沢美津

  魚市の若い衆の鋭き暴言が景気となりて師走はゆくも

                       馬場あき子

  竜となり虎(こ)となり師走の夜を吼ゆる大樹園の凧に戦(をのの)きにけり

                        岩田 正

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雁の列