感情を詠むー「忍ぶ」 (4/4)
玉の緒よたえねば絶えね長らへば忍ぶることのよわりもぞする
*「命よ、絶えるのならば絶えてしまえ。このまま長く生きていれば、恋に耐え忍ぶ力が弱ってしまいそうだから。」
忍ぶるに心のひまはなけれどもなほ漏るものは涙なりけり
新古今集・藤原兼実
思ふには忍ぶる事ぞまけにける逢ふにしかへばさもあらばあれ
*上句は、恋の葛藤を「思ふこと」と「忍ぶること」の争いとみて、後者が前者に負けたと言いなしたもの。
さもあればあれ: どうなってもよい。(逢うことさえできれば)
しのばじよ岩間づたひの谷川も瀬をせくにこそ水まさりけれ
新古今集・藤原公継
*「もう忍びませんよ。石の間を伝って流れる谷川も、流れをさえぎって止めることで、かえって水かさがまさるのです。」
夜の間にもきゆべきものを露霜のいかに忍べとたのめ置くらむ
忍べとや知らぬむかしの秋をへておなじかたみにのこる月かげ
新勅撰集・藤原定家
*「私の知らない昔の秋を経てきて、同じ昔の形見として残っている月は、私に見ぬ昔を偲べというのであろうか。」