天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

罪を詠む(3/3)

  わが罪を我が悔ゆる時わが命如何(いか)にかならむ哀(かな)しよ吾妹(わぎも)

                        伊藤佐千夫

  あなあはれもつべきものは子なりけり子は身にかぶれ父親の罪

                          岡 麓

  仮借なき罪の意識におびえつつ砂の乾きし舗道をゆきぬ

                         三国玲子

*仮借なき: 許せない。

 

  うな垂れて罪に悔いゐしわが肩におかれし一つの掌をば忘れず

                         太田青丘

  百合裂けて種子はらはらとふりこぼす罪科(つみとが)はげに地の上のこと

                         古谷智子

*げに: ある事柄に対する他人あるいは自分の評価・判断を肯定して、さらに強調する気持ちを表す。本当に。実に。全く。

 

  あの世には姦通罪があるかもと揺れてささやく土手のコスモス

                        江副壬曳子

 

 いずれの作品も劇的である。三国玲子は、鬱病で入院し同病院で飛び降り自殺するのだが、「仮借なき罪」が関係していたのだろうか。

f:id:amanokakeru:20201231064905j:plain

コスモス