罪を詠む(3/3)
わが罪を我が悔ゆる時わが命如何(いか)にかならむ哀(かな)しよ吾妹(わぎも)
伊藤佐千夫
あなあはれもつべきものは子なりけり子は身にかぶれ父親の罪
岡 麓
仮借なき罪の意識におびえつつ砂の乾きし舗道をゆきぬ
三国玲子
*仮借なき: 許せない。
うな垂れて罪に悔いゐしわが肩におかれし一つの掌をば忘れず
太田青丘
百合裂けて種子はらはらとふりこぼす罪科(つみとが)はげに地の上のこと
古谷智子
*げに: ある事柄に対する他人あるいは自分の評価・判断を肯定して、さらに強調する気持ちを表す。本当に。実に。全く。
あの世には姦通罪があるかもと揺れてささやく土手のコスモス
江副壬曳子
いずれの作品も劇的である。三国玲子は、鬱病で入院し同病院で飛び降り自殺するのだが、「仮借なき罪」が関係していたのだろうか。