天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

仏を詠む(3/6)

  頭おさへ悶(もだ)え泣(なき)する仏あれば大声あげて泣く仏あり

                       川田 順

  くろぐろと仏まろべり薄き日のただよふ床(ゆか)のむしろの上に

                       川田 順

  網の目に閻(えん)浮(ぶ)檀(だ)金(ごん)の仏ゐて光りかがやく秋の夕ぐれ

                       北原白秋

*閻浮檀金: 仏教の経典中にしばしばみられる想像上の金の名称。その色はを帯びた赤黄色で,金のなかで最もすぐれたものとされる。

 

  むさし野の奥沢村に年久しくいます仏の膝(ひざ)の塵(ちり)はも

                       植松寿樹

*奥沢: 世田谷区南部の玉川地域に属する。貞和頃から吉良氏の所領となり、奥沢城が築かれた。江戸時代には荏原郡奥沢村となり、城の跡地には浄真寺が創建された。

 

  吾の背に仏の如くかがまれり物言ふこゑは其(その)常の声

                       五味保儀

  この野の仏いづれも首を失へり 崩(くづ)れ一揆(いつき)の祖父(おほちち)の斧(おの)

                       斎藤 史

  つくづくとわれをみつむる老婆なり首無しの仏つくりし人か

                       前登志夫

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菩薩