天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

仏を詠む(6/6)

  天竺からみれば第三セクターのやうな大和のほとけほほゑむ

                      馬場あき子

*天竺: インドをさす中国での古称。日本では,インドは古来から明治にいたるまでこの呼称で呼ばれ,ブッダの生れた国として親しまれた。(百科事典から)

 

  雨深き夜詣(まう)で来(き)ぬ 二月堂 ほとけよ我は祈願は捨てつ

                      王藤内雅子

東大寺二月堂の本尊は大小2体あり、いずれも十一面観音。大観音・小観音ともに絶対の秘仏で、修二会の法要を務める練行衆さえもその姿を見ることは許されないという。

 

  笑みたまふことに疲れてみほとけは或る夜真顔のひとときありや

                      五十嵐裕子

  涸(か)れ川のように衣の彫られたる仏のありて足ながきかな

                       吉川宏志

  金色のみほとけくらき本堂に蝶がただ一つ飛んでゐるだけ

                      安立スハル

  み仏のいますみ堂に人ら語る老いゆく苦悩生きゆく苦悩

                      中埜由季子

  みほとけの少しうつむく若葉かげ願いつましき世の暮らしむき

                       三枝昂之

 

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東大寺二月堂の本尊