汗のうた(1/3)
汗は、哺乳類が皮膚の汗腺から分泌する液体。皮膚表面からの汗の蒸発には、気化熱による冷却効果がある。気温の高い時や、運動により個体の筋肉が熱くなっている時には、より多くの汗が分泌され、体温を一定に保つような働きをする。主成分は、塩分、尿酸、アンモニアなど。汗をかく機能が身体に備わったのは、サルからヒトに進化する過程でのことという。
汗もよに乱るる夏も涼しきは君にあふぎの風はやみなり
*もよ: 係助詞「も」に間投助詞「よ」の重なったもので、名詞、活用語の終止形、助詞「は」に付く。強い感動・詠嘆を表す。…(も)まあ。
雪降れる山に汗垂りわが心のこのくるしさを遣(や)らむとぞおもふ
手を当てて心もとなき腋(わき)草に冷たき汗はにじみ居にけり
長塚 節
*腋草: 腋毛。腋毛を草に見立てた語。
夏の日はなつかしきかなこころよく梔子(くちなし)の花の汗もちてちる
*結露した梔子の花が散る情景か。珍しい。
人妻のすこし汗ばみ乳をしぼる硝子杯(コツプ)のふちのなつかしきかな
*人妻が自分の乳を搾ってコップに溜めているのであろう。
うつし身の汗が乾きてかなしもよ塩となるまで今日歩きたり
松村英一
崖たかく天日(てんじつ)澄みて蒼ければ汗はしきりにわが頭より垂る
前川佐美雄