天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

汗のうた(1/3)

 汗は、哺乳類が皮膚の汗腺から分泌する液体。皮膚表面からの汗の蒸発には、気化熱による冷却効果がある。気温の高い時や、運動により個体の筋肉が熱くなっている時には、より多くの汗が分泌され、体温を一定に保つような働きをする。主成分は、塩分、尿酸、アンモニアなど。汗をかく機能が身体に備わったのは、サルからヒトに進化する過程でのことという。

 

  汗もよに乱るる夏も涼しきは君にあふぎの風はやみなり

                      藤原師氏

*もよ: 係助詞「も」に間投助詞「よ」の重なったもので、名詞、活用語の終止形、助詞「は」に付く。強い感動・詠嘆を表す。…(も)まあ。

藤原師氏: 平安時代中期の公卿、歌人

 

  雪降れる山に汗垂りわが心のこのくるしさを遣(や)らむとぞおもふ

                      斎藤茂吉

  手を当てて心もとなき腋(わき)草に冷たき汗はにじみ居にけり

                      長塚 節

*腋草: 腋毛。腋毛を草に見立てた語。

 

  夏の日はなつかしきかなこころよく梔子(くちなし)の花の汗もちてちる

                      北原白秋

*結露した梔子の花が散る情景か。珍しい。

 

  人妻のすこし汗ばみ乳をしぼる硝子杯(コツプ)のふちのなつかしきかな

                      北原白秋

*人妻が自分の乳を搾ってコップに溜めているのであろう。

 

  うつし身の汗が乾きてかなしもよ塩となるまで今日歩きたり

                      松村英一

  崖たかく天日(てんじつ)澄みて蒼ければ汗はしきりにわが頭より垂る

                     前川佐美雄

 

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梔子の花