天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

汗のうた(2/3)

  汗かきて土用の入りの今日すがし皇軍(すめらみいくさ)火ぶた切ったり

                      川田 順

皇軍: 天皇が統率する軍隊。もと、日本の陸海軍を称した。

 

  往来(わうらい)に馬をとどめて荷を下(お)ろす人の汗にほふ家の中まで

                     三ヶ島葭子

  命ありて朝をむかへし妻あはれ髪の下に汗の光る玉はや

                      樋口賢治

*なんとも身に迫る情景。

 

  汗の体拭かせてをりぬ巷には秋草の花すでに売るらむ

                      金石淳彦

  あぶら汗ぢりぢり額ににじみ来れ顔と顔とを押しあひ耐へゐる

                      太田青丘

  五月祭の汗の青年 病むわれは火のごとき孤独もちてへだたる

                      塚本邦雄

*五月祭といえば、通常は東京大学のそれをさす。ただ塚本は東大とは無関係だったはずなので、これはテレビで五月祭の情景を見ていた時の感想であろうか。

 

  いくたびか汗をおさめて立ちむかう西欧というは遂に何ならん

                      岡井 隆

*西欧に関わる本を読んでいて難解な箇所にぶつかったときの感想であろう。

 

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五月祭 (WEBから)