天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

刃物を詠む(2/8)

剣大刀(続き)

  剣もて人をきる身のはてやただしでの山路の杣木ならまし

                       心敬

*しでの山路: 死出の山の険しい山路。  杣木: 燃料などにする雑木、たきぎ。

「剣で人を切る人間の行く果ては、ただ死出の山の険しい山路にある薪であってほしい。」

 

  緋(ひ)威(をどし)の鎧を着けて太刀佩きて見ばやとぞ思ふ山ざくら花

                     落合直文

  韓山(からやま)に、秋かぜ立つや、太刀なでて、われ思ふこと、無きにしもあらず

                    与謝野鉄幹

*鉄幹のいわゆる「虎剣調」の慷慨歌である。

 

  軍衣袴(ぐんいこ)も銃(つつ)も剣も差上げて暁(あかつき)渉る河の名を知らず

                     宮 柊二

  「神の剣」のごとくにぞ夏の雲光りめぐり来たれる八月十五日

                     前田 透

 

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太刀