刃物を詠む(3/8)
斧(おの)
斧は石器時代より、石斧(せきふ)として存在し、樹木をたたき切る道具や武器として用いられた。石斧はその製法により打製石斧と磨製石斧に分けられる。技術の発達に連れ、銅、青銅、鉄および鋼で作られた斧が現われた。(百科事典)
この野の仏いづれも首を失へり崩(くづ)れ一揆(いつき)の祖父(おほちち)の斧
斎藤 史
*「崩れ」は、1つの地域で大勢のキリシタンの存在が発覚する事件のことだが、一揆となると天草の島原の乱が有名。この一首では、天草とは無関係と思うが、いずれにせよキリシタンたちが野の仏の首を斧で断ち切ったのであろう。そこに祖父も加わっていた、という。
君絶えず流転のすがた炎天にわが庭の斧あつく灼けたり
岡部桂一郎
死者の斧夜に打ちしかばあかときの炉に羽ばたきぬ火の鳥一羽
*なんとも難解な一首! 初句二句が意味不明。詩か小説を踏まえているのだろうか?
さくら咲くその花影の水に研ぐ夢やはらかし朝(あした)の斧は
皸(ひび)われし手に握られて冬の斧汗ばむばかりの瞋(いか)りを持てよ
轟 太市
斧をもてひと日ひと日を割るごとく生きのたづきに立ち向ひをり
後藤直二
冬の斧たてかけてある壁にさし陽は強まれり家継ぐべしや