ナイフ
磨きたての細刃(ほそば)のナイフ物清く割(さ)きて匂(にほ)はすさながらの君
尾上柴舟
*君の性格を「匂はす」までの長い詩句で形容したのだろう。
尋常のおどけならむやナイフ持ち死ぬまねをするその顔その顔
石川啄木
研ぎあげしナイフ一振り水張田の水のごときが抽出に在り
安永蕗子
切るナイフえぐるスプーン刺すフォークきらきらしくて燦たり食は
松平盟子
*豪華な洋食を食べている情景が思い浮かぶ。
水のごと光りてゐたる卓上のナイフが急に流れはじめる
足立晶子
*結句の「流れはじめる」が分かりにくい。急にナイフを誰かが使い始めたか。