天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

刃物を詠む(5/8)

ナイフ

  磨きたての細刃(ほそば)のナイフ物清く割(さ)きて匂(にほ)はすさながらの君

                     尾上柴舟

*君の性格を「匂はす」までの長い詩句で形容したのだろう。

 

  尋常のおどけならむやナイフ持ち死ぬまねをするその顔その顔

                     石川啄木

  研ぎあげしナイフ一振り水張田の水のごときが抽出に在り

                     安永蕗子

  切るナイフえぐるスプーン刺すフォークきらきらしくて燦たり食は

                     松平盟子

*豪華な洋食を食べている情景が思い浮かぶ。

 

  水のごと光りてゐたる卓上のナイフが急に流れはじめる

                     足立晶子

*結句の「流れはじめる」が分かりにくい。急にナイフを誰かが使い始めたか。

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ナイフ