天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

刃物を詠む(8/8)

 金属の象形である「金」偏と「並んだ稲を合わせて手につかむ」象形である右偏「兼」とで機能を表現している漢字。

 

  雨の中の草を刈り来て鎌さしにさしたる鎌が雫を垂らす

                     松井 保

  葱坊主の首刈る利鎌ひらひらと遠稲妻もみちびく夕べ

                     波汐國芳

*利鎌(とがま): よく切れる鎌。

 

鉾・槍

  山の端に月のしら刃のかげさせば谷間の杉の鉾とがりくる

                     四賀光子

  孤独なるさまにフィールドに射さりたる槍をひとときテレビは見しむ

                     田谷 鋭

槍投げの情景。

 

鑿(のみ)

  びろうどの朱の花重き鶏頭に鑿ひびきをり石切場より

                    初井しづ枝

  鑿の音風の切れめによみがへり石の船など刻むならずや

                     大西民子

*風にのって聞こえてくる鑿の音から石を打っていることが分かったのだろう。そこから石の船を連想した。

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   鎌           槍           鑿