島を詠む(1/3)
島とは、通常、周囲が水で囲まれている陸地のことであるが、時に仲間内の勢力範囲などを意味する。なお山斎や林泉を「しま」と読むが、これらは泉水や築山のある庭園をさす。
荒磯(ありそ)ゆもまして思へや玉の浦の離れ小島(こじま)の夢(いめ)にし見ゆる
万葉集・作者未詳
*玉の浦: 那智勝浦町の西端近くにある現在の玉の浦海水浴場にあたるらしい。万葉以来の歌枕。
「荒磯よりもいっそう心惹かれたからか、玉の浦の離れ小島を夢にまで見えることだ。」
妹として二人作りしわが山斎(しま)は木高く茂くなりにけるかも
*「妻と二人で作ったわが家の庭園は木々が見事に茂っていることだなあ。」
ほのぼのと明石の浦の朝霧に島隠れゆく船をしぞ思ふ
*「ほのぼのと明るんでいく明石の浦に立ち込める朝霧の中を、島隠れに行く舟のことが思われることだ。」
照る月をくもなかくしそ島かげにわが船とめんとまりしらずも
*「照る月を雲よ隠すな。島陰にわが船をとめようと思うが、港が分からない。」
塩竈の前にうきたる浮島のうきて思のある世なりけり
古今和歌六帖・山口女郎
*「塩釜の浦の前方に浮ぶ浮島ではないが、いつも不安で物思いの絶えないこの世であることよ。」
浪の上にうつる夕日の影はあれど遠つ小島は色暮れにけり
玉葉集・藤原為兼
わたつみもゆきげの水はまさりけりをちの島々見えずなり行く