天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

火山、温泉(3/4)

  足柄の土肥の河内(かふち)に出づる湯のよにもたよらに子ろが言はなくに

                    万葉集・作者未詳

*上句は湯河原の温泉をさす。

「足柄の土肥に湧く温泉のように、二人の仲は絶えることなどない、とあの娘は言うのだけれども」 

 

  つきもせず恋に涙をながすかなこやななくりの出湯なるらむ

                     後拾遺集・相模

*ななくりの出湯: 別所温泉のこと。信州で最も古い歴史をもつ温泉の一つであり、有馬温泉玉造温泉とともに日本三大名泉。

 

  たぎり湧くいで湯のたぎりしづめむと病人(やまうど)つどひ揉(も)めりその湯を

                        若山牧水

  渓(たに)おくの温泉(いでゆ)の宿の間(ま)ごと間ごと人も居らぬに秋の日させり

                        若山牧水

  もみぢ葉はてりつつ寒き山を見て濁る温泉にからだしづめむ

                        土屋文明

*初句二句のつながりが独特。

 

  此の山の温泉(いでゆ)よろこぶ君がへに左千夫歌集も編みにしものを

                        土屋文明

  箱根山出で湯めぐりのかへるさに秋なく虫のこゑをきくかな

                        太田水穂

 

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湯河原の温泉