天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

田畑のうた(2/8)

  いくばくの田をつくればか郭公しでのたをさを朝な朝なよぶ

                   古今集藤原敏行

*「どれほどの田を作っているからというので、ほととぎすは、「シデノタヲサ」と鳴いて、あの田植えの統率者である、しでの田長を毎朝毎朝呼ぶのか。」

 

  春の田を人にまかせて我はただ花に心をつくるころかな

                   拾遺集斎宮内侍

  谷水をせくみな口にいぐし立て五十代小田(いそしろをだ)に種まきてけり

                  堀川百首・藤原仲実

*みな口: 水の取り入れ口。  

いぐし: 榊や笹などの小枝に幣をかけて神に供えるもの。玉串。

 

  秋来れば朝けの風の手もさむみ山田の引板(ひた)をまかせてぞ聞く

                  新古今集大江匡房

*引板: 吊るした板を引いて鳴らす、鳥獣よけの仕掛け。

「もう秋になったので、夜明けの風は手に寒く、引板を鳴らすのも辛い。風の吹くのに任せ、板が音を立てるのを聞くばかりだ。」

 

  春風は吹き初めにけり筑波嶺のしづくの田居や冰(こほり)とくらむ

                      油谷倭文子

  ふる雨と照る日の恵みまちまちに高田くぼ田も神のまにまに

                       荷田春麿

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筑波嶺