天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

田畑のうた(5/8)

  二三時間前に水張り終りたる田なかはすでに泳ぐ虫あり

                       浜田康敬

  ひとり田を掘り返しいる老婆いてしきり降る雪を土に埋めゆく

                       浜田康敬

  休耕田のむかう小手毬の吹かれゐてかはたれどきをかむなぎの舞

                       長尾朝子

*かむなぎ: 神に仕えて、神楽を奏して神意を慰め、また、神降ろしなどをする人。

 

  宇宙塵いくたび折れて届きたる春のひかりのなかの紫雲英田(げんげだ)

                       玉井清弘

宇宙塵とは、宇宙空間に存在する星間物質の一つで、大きさは10ミクロン以下。地球上にもそのまま落ちてくるが微細なため他のごみとの判別が困難。

下句が即ち宇宙塵というのか、そうではなく上句で「春のひかり」を修飾しているのか? なんとも分りにくい!

 

  山峡の棚田は四角も眉形もありて夕ぐれを黒く光れる

                       大塚洋子

  さやさやの青田のなかに杭ひとつ鴉の去ればまた杭ひとつ

                       砂田暁子

  人間の技美しき早苗田が水を呼び水が夏雲を呼ぶ

                       三枝昂之

 

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小手毬