田畑のうた(6/8)
いつの日か田の埋まらむ一人植うる濁りに白きビルのゆらげり
かはるなく屈みて終る吾が未か草取る姑の田に低き影
*自分の未来を田の草を取る姑の姿に見ている。農家の嫁姑の人生を詠んで、重苦しい。
眼窩数多(あまた)もてるおどろの実を結び月夜風の夜蓮田(はちすだ)冷ゆる
富小路禎子
*上句は蜂の巣状に見える蓮の花托の様子。
西陽避けてトラックの陰に憩ひ居る田植ゑ終へたる中年夫婦
羽田忠武
諦めて田に掛け残す長稲架(ながはさ)の稔りなき穂に降る雪は積む
菊池映一
水張り田に映る五月の空の色截りて早苗の点描つづく
伊吹 純
あずさゆみ春のひろ野に草萌えて休耕田の畦道をゆく
中川左和子
*あずさゆみ: 春(張る)の枕詞。