天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

文(房)具を詠むー墨・インク・クレヨン(2/2)

 インク(英語ink)とは顔料・染料を含んだ液体、ジェル、固体で、文字を書いたり表面に色付けするために用いられるもの。油性や水性がある。墨も一種のインクといえる。

 クレヨン(フランス語から)は、溶かした蝋と顔料などを混ぜて棒状に冷やし固めた画材。

(以上、百科事典から)

 

  新しきインクのにほひ栓(せん)抜けば餓ゑたる腹に沁(し)むがかなしも

                   石川啄木

  指先にインク滲みしも貧しくて混み合ふ電車に吊革握る

                   礒 幾造

  吸ひ上げてあをきインクの充つるを待つしづかなるかもこの吸引は

                   斎藤 史

  たたかひに入らむがごときいまのおもひインクの壺にインクみたせば

                   木俣 修

*さあこれから書くぞ、という戦闘的な気分になってきたのだろう。書こうとしている内容に左右されているのかも。

 

  新しきインクをおろす風の朝 青桔梗あをききやうと声す

                  小島ゆかり

  インク壺に黒を満たして書くという小世界ついに出づることなし

                   石本隆一

  一本のクレヨンに裸婦描かれてぬくもりゐたり褐色の肌は

                   奥村晃作

  クレヨンに「肌色」という不可思議の色あり誰の肌とも違う

                   松平盟子

 

f:id:amanokakeru:20210219064041j:plain

インク