心を詠む(5/20)
面影をあひみしかずになすときは心のみこそしづめられけれ
後撰集・伊勢
*姿を思うだけでも実際に逢う数に加えられれば、心が鎮められるという。
思ひやるこころばかりはさはらじを何へだつらむみねの白雲
後撰集・橘 直幹
秋萩を色どる風は吹きぬとも心はかれじ草葉ならねば
*心と植物とを比較して、自分の心の変わらなさを主張しているようだ。
かくれぬの底の心ぞ恨めしきいかにせよとてつれなかるらむ
ふたつなき心は君におきつるをまたほどもなく恋しきはなぞ
拾遺集・源 清蔭
*「ふたつとない私の心は、あなたのもとに置いてきましたのに、離れたらまたすぐにあなたへの思いにとらわれるのはなぜでしょうか。」と理屈で読ませる。
逢ひ見ての後の心にくらぶればむかしは物をおもはざりけり
ときのまも心は空になるものをいかですぐししむかしなるらむ
雲居なる人をはるかに思ふには我がこころさへ空にこそなれ
拾遺集・源 経基