天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

心を詠む(10/20)

  しら玉の心は光れひもじくばあらがねの土もなほ啖(くら)ふべし

                     中村三郎

  砂の上に死ぬる駱駝(らくだ)の心をも今夜(こよひ)悲しみ夜ふけむとす

                    柴生田 稔

*把握が独特だが、分かる気がする。

  勢へる野戦志願の兵見れば寧(むし)ろいたましき心も湧きぬ

                     渡辺直己

*普通のことであろう。部下思いの上官ならなおさらのこと。

  あるときはコマクサの青にちからわきおのづから心ひくくしたりき

                    鹿児島寿蔵

*結句「心ひくくしたりき」の解釈は、言葉にしにくいが、謙虚な気持になったということだろう。

  悲しみの日とするこころ吾にありて三たび近づく八月十五日

                     山本友一

  世をあげし思想の中にまもり来て今こそ戦争を憎む心よ

                     近藤芳美

*「世をあげし思想」とは、大東亜共栄圏構想のようなものか。

  原色にひとのこころの描かれて鏡さながらピカソの裸婦像

                    上川原紀人

  あるときは襤褸の心縫わんとしき襤褸の心さらされていよ

                     武川忠一

*「襤褸の心」とは、ちりじりに乱れた心のことか。へんに取り繕わずに、そのままに堪えていよ、と言う。

f:id:amanokakeru:20210303064311j:plain

駱駝