心を詠む(11/20)
わが心君に近づくこの日まづ悔の涙にみそぎししまし
原 阿佐緒
君思ふこころ極まり坂路をば息をもつかずひたのぼりけり
矢代東村
ひそやかに庭木をぬらす昼の雨あひたき心しのびてをらむ
松田常憲
日はのぼり日はまた沈むいつのときもわれに凛たり心の一樹
加藤克己
夜の窓にありありとわが映りゐてわれの孤りのこころも映る
飛ぶ雪の碓氷(うすい)をすぎて昏みゆくいま紛れなき男のこころ
岡井 隆
*「飛ぶ雪の碓氷(うすい)」は、実景であろうが、和歌の「飛ぶ鳥の明日香(あすか)」を連想させて、あたかも碓氷の枕詞が「飛ぶ雪の」であるかのようだ。岡井 隆はそれを意図していたか。
今日一日天(ひとひあめ)の変化(へんげ)のはげしさやこころをさらふ春のさきぶれ
岡井 隆
*結句は上句の言い換えである。
光りつつ天を過ぎゆく一機あり錐揉み状に堕ちたき心
*飛行機を見上げた時、錐揉み状に墜落する情景を想像したのだろう。