天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

心を詠む(20/20)

  こころとは脳の内部にあるという倫理の先生の目の奥の空

                     小島なお

*下句は、上句の内容を話す倫理の先生の目にたまたま空が映っていたのだろう。

 

  なんとなく女になりうる心地して菜の花の村に雪ふるを見つ

                    前 登志夫

*菜の花の村に雪が降る情景を見ていて起きた心情であろう。女のやさしさを感じたのだ。

 

  心の闇、ではなく心は闇である人の世に咲く巨大朝顔 

                    米川千嘉子

*「心の闇」という場合は、心に晴れの部分もあることを意味するが、「心は闇」となると、心には闇しかないことになる。そんな人の世に巨大朝顔が咲いているという。心を離れると大いなる希望が見えてくる、と言っているようだ。

 

 いずれの作品も取合せの手法を用いている。なぜ心にそのようなものを取合せたかを読者が問いかけることは無意味であろう。

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朝顔