天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

命の歌(3/17)

  恋しきに命をかふるものならばしにはやすくぞ有るべかりける

                  古今集・読人しらず

*「この恋しい気持と我が命を換えることができるなら、命を失う死のほうがずっとた易いものなんだなあ。」という。

 

  年をへてあひみる人のわかれには惜しきものこそ命なりけれ

                   後撰集小野好古

  玉の緒のたえて短きいのちもてとしつきながき恋もするかな

                   後撰集・紀 貫之

  ながらへば人の心もみるべきに露のいのちぞかなしかりける

                     後撰集・土佐

  こひしさに死ぬる命をおもひいでてとふ人あらばなしとこたへよ

                 大和物語・読人しらず

*物語の流れに沿って読むと分かりやすいかも。意味は「恋しさゆえに私は死んでしまう命ですのに、もし、そんな私を思い出して、訪ねる人がいたら、すでに此の世には生きていないと答えなさい。」

 

  いはばしるやまゐの水をむすびあげて誰が為惜しき命とかしる

                     伊勢集・伊勢

  いきたれば恋することの苦しきになほいのちをば逢ふにかへてむ

                  拾遺集・読人しらず

  逢ひ見ては死にせぬ身とぞ成りぬべき頼むるにだに延ぶる命は

                  拾遺集・読人しらず

 

 前回の作品でもそうだが、あなたに逢えるなら命を捨ててもよい、という詠み方が目立つ。

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