天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

乗りもののうたー汽車、電車(2/5)

  トンネルを出でて漁村に汽車止りぬ窓近く聞くは郷里(ふるさと)の声

                       葛原 繁

  褐色の鉄橋をわたり汽車往けりどの窓も淡く河を感じて

                       前登志夫

  ふところに星一つ入れ眠りおり過ぎゆく遠き夜の汽車の音

                       石井利明

*上句は夢あるいは希望を抱いて汽車に乗っていることを暗示しているのだろう。

 

  汽車の厠にかがまむとして思ふかかるとき落命してはならぬぞ

                       二宮冬鳥

  冬枯れし野末の山は雪しぐれ吾が汽車やがてそこに行くなり

                       若山旅人

  ひた走る電車のなかを飛ぶ蠅(はへ)のおとの寂しさしぶくさみだれ

                       斎藤茂吉

  椅子一つ得れば忽ち居睡りにおちゆく民を電車に見出す

                       太田青丘

f:id:amanokakeru:20210428070726j:plain

トンネル