数のうた(2/3)
人知れず落つる涙のつもりつつ数かくばかりなりにけるかな
拾遺集・藤原惟成
*古今集のよみ人しらずうた「行く水に数かくよりもはかなきは思はぬ人を思ふなりけり」を踏まえる。
「人知れずこぼした涙が積もり積もって川のようになり、むなしく数を記すほどになってしまいましたよ。」
数ふれば空なる星もしるものをなにをつらさの数にとらまし
*「星の数は数えられても、つらさの数をどうやってはかればよいのか。」
数ならで心に身をばまかさねど身にしたがふは心なりけり
千載集・紫式部
*2021-02-28の「心を詠む(8/20)」を参照。
おしなべて思ひしことのかずかずになほ色まさる秋の夕暮
新古今集・藤原良経
八百日(やほか)ゆくはまの真砂を君が代の数に取らなむ沖つ島もり
新古今集・藤原実定
*「通過するのに800日もかかる砂浜の砂の数をわが君の御代の数として数えてください、沖の島の島守よ。」
新古今集・源 家長
*「詠草はいくら集めても尽きることはないでしょう。君が代は千年も万年も続く、その数に匹敵して、ひっきりなしに詠まれる和歌――和歌の浦に打ち寄せる波のように限りなく。」
はかなしやさても幾夜かゆくみずに数かき侘ぶるをしの独寝
新古今集・藤原雅経
*「先の見通しもないなあ。そんな状態でも幾夜も水をかき分け続けるのに耐えられなくなっている一人寝の鴛鴦。」