天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

まつりごと・政治のうた(1/3)

 政治とは、主権者が、領土・人民を治めること。まつりごと。ある社会の対立や利害を調整して社会全体を統合するとともに、社会の意思決定を行い、これを実現する作用。(デジタル大辞泉の解説)

 具体的事案について詠うときは、時事詠になる。

 

  高円(たかまど)の野の上(うへ)の宮は荒れにけり立たしし君の御代(みよ)遠そけば

                     万葉集大伴家持

*「高円の野の宮はすっかり荒れてしまいました。天皇の時代が遠い昔のことになってしまったので。」 天平宝字二年に、二年前に亡くなった聖武天皇をしのんで家持が詠んだ。

 

  君が代は久しかるべし度会(わたらひ)や五十鈴の川の流れ絶えせで

                    新古今集大江匡房

*渡会: 伊勢地方の旧名。

「わが君の御代は末永く続くに違いありません。この伊勢の地にある五十鈴川の流れが絶えないのと同じように。」

 

  奥山のおどろが下も踏み分けて道ある世ぞと人に知らせむ

                    新古今集後鳥羽院

*「奥山のおどろの下までも踏破して、厳然と道のある世の中だということを人々に知らせねばならぬ。」

 

  身にかへて思ふとだにも知らせばや民の心のをさめがたきを

                   新千載集・後醍醐天皇

  治まれるあとをぞしたふおしなべて誰が昔とは思ひわかねど

                    風雅集・後醍醐天皇

  なほざりに思ふ故かと立ちかへりをさまらぬ世を心にぞ問ふ

                    新千載集・後光厳院

  民安く国治まれと祈るかな人のひとよりわが君のため

                  新葉集・二品法親王深勝

  雲のうへをさまる春のまつりごといでたつ庭にまづしられつつ

                     新葉集・阿野実為

*阿野(あの)実為(さねため) は、 南北朝時代 の 公卿 。官位 は 従一位内大臣南朝 )。 祖父・ 阿野公廉 の女・ 廉子 (新待賢門院)が 後醍醐天皇 の寵妃であった関係から、 阿野家 は代々南朝方公卿として活躍した。

 

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五十鈴川