天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

戦争を詠むー戦い(5/6)

  大学は戦に黒く塗られきと我ら添ひゆくその黒き壁に

                         葛原 繁

  窓をうつ風に目ざめてききゐたり友の多くは戦(いくさ)に死にき

                         島本正齋

  征く日まで戦(いくさ)のさなか端坐して深夜ひとりの碁を打ちし音

                        窪田章一郎

  かすかなる幸といはむか子の亡くて戦に死なすかなしみは知らず

                         松川洋子

  ハーブ橋の弦のライトが今宵は点かぬ遠き砂漠の戦争(いくさ)に因るなり

                         小林敬

  戦に沈みし船の幾千の死者らが夜の船底たたく

                        井口世津子

  闇を縫ひ岩根伝ひて落つる音雫は戦の惨を秘めもつ

                         楚南弘子

 

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船底