幾千の眼(まなこ)のまへに黒潮はをとこを戦(いくさ)へおくりたる路
小黒世茂
アラビアン・ブルーの海はひたすらに光りてをりぬ戦あらしむな
藤岡成子
「戦(をのの)き」も「戦ぎ(そよ)」もあるをまどふなく「戦(いくさ)」と
読みて徒労感濃し 斎藤すみ子
熱いお茶に淹れかへようか遠国の戦さがどうやら終りへむかふ
林 和清
妻枕(ま)かず戦の野に曝れゆきし兄よふるさとの野の花を見よ
青木ゆかり
この児らを戦にかり出すことなかれ傘を振り振り下校してゆく
島津忠夫
ものしづかに暮れてゆく春ふたたびをいくさはあるな地平は緑
伝田幸子