天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

戦争を詠むー終戦・敗戦(3/3)

  草中に刀をはふりて立ち尽す敗戦の日は暑かりしかな

                         大越一男

  古今集仮名序におほきみ、すべらぎとありし人のこゑ敗戦告げき

                         栗木京子

*昭和20年8月15日に玉音放送昭和天皇)により、日本の降伏が国民に公表された。

 

  戦(いくさ)の日に砲をつくりし廃屋をめぐりて泡立草ゆれやまず

                         島本正齋

  くぐり来し戦語れと雛の目真綿に包み闇にもどしぬ

                         玉井清弘

  唐黍の焼くる匂ひに顕つ亡母(はは)も戦も遠き記憶となれり

                         神辺園子

  ふるさとの戦の惨を呑みほして喜屋武の海面の青き鎮もり

                       与那覇久美子

  僅かに三十余年前の戦(いくさ)さへ忘れしごときもの言ひをする

                       安立スハル

  はるかなる記憶といえどあざやかに戦(いくさ)を知ればわれは譲らず

                       影山美智子

 

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唐黍