天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

呪われた従軍歌集(3/10)

 昭和十三年九月、内閣情報部は、従軍作家陸軍部隊を組織したが、そこには歌人が含まれていなかった。歌人協会の働きかけおよび小泉苳三単独での出願により、苳三の従軍が許可された。旅費は軍が持ったが、旅装一切は本人負担であった。左官待遇(四十四歳という年齢を考えれば、大佐級であろう)なので、軍刀を必要としたが、親族の壮行会から昭和新刀が一口贈られて格好がついた。

 従軍に先立って大日本歌人協会から、武運長久を祈るという寄せ書きの日の丸を贈られたことが、歌集内の写真から分かる。そこには、北原白秋の署名と歌「荒魂しかも和すとあきらけし遠つ御祖は討ちにうたしき」、土屋文明土岐善麿前田夕暮、石榑千亦、尾山篤二郎などの歌人の署名が見え、「小泉苳三君へ贈る」とある。

 

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軍刀