恋(4/13)
玉の緒のたえて短きいのちもてとしつきながき恋もするかな
後撰集・紀 貫之
*玉の緒の: (枕詞) 玉を通す緒の意で、その長短から「長し」「短し」、乱れたり切れたりすることから「思ひ乱る」「絶ゆ」「継ぐ」、玉が並んでいるようすから「間 (あひだ) もおかず」などにかかる。
忍ぶれど色に出にけり我がこひはものやおもふと人の問ふまで
拾遺集・平 兼盛
身にこひのあまりにしかば忍ぶれど人の知るらむことぞ侘しき
拾遺集・読人しらず
忍ぶれどなほしひてこそ思ほゆれ恋といふものの身をし去らねば
拾遺集・読人しらず
恨みわびほさぬ袖だにあるものを恋にくちなむ名こそ惜しけれ
後拾遺集・相模
*「恨んで泣き続けて涙を乾かすひまもない着物の袖さえ惜しいのに、この恋のおかげで悪い噂を立てられ、朽ちていくだろう私の評判が惜しい。」
世の中に恋てふ色はなけれども深く身にしむ物にぞありける
ひと知れぬ恋にし死なばおほかたの世のはかなきと人やおもはむ
後拾遺集・源 道済