天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

恋(6/13)

  ややありてふたたびもとの闇となる花火に似たる恋とおもひぬ

                        吉井 勇

*上句は花火にかかる序詞。言いたいことは下句。

 

  忍ぶ恋見ぬ恋恋のあはれさのかずかずを取り集めたる恋

                        吉井 勇

*「恋」のリフレイン。あわれさで恋を分類できるのかも。

 

  赤き色のマツチの軸の火が赤し恋はほのかに遂げしめ給へ

                        山崎方代

*作者は、マッチのように燃え上がる恋は苦手のようだ。

 

  一度だけ本当の恋がありまして南天の実が知っております

                        山崎方代

  恋に死すてふ とほき檜のはつ霜にわれらがくちびるの火ぞ冷ゆる

                        塚本邦雄

*初句の具体的内容を、二句以下の情景で示した構成。

 

  恋や恋 われらにさむき砂婚てふ中空の星なべて火の砂

                        塚本邦雄

*難解! 二句以下で恋のひとつの解釈を示しているようだが。宇宙から見た地球上の恋を詠んだように思える。

 

  時間てふ沼のさざなみ青年は戀のはじめにして老い兆す

                        塚本邦雄

f:id:amanokakeru:20210616063646j:plain

南天の実