天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

恋(8/13)

  この恋を捨つる期すでにおくれたりはた遂ぐる期のなき世ながらに

                        原阿佐緒

*作者は、美貌の持ち主であり若くからさまざまな恋愛問題を引き起こした。この歌の内容は、物理学者・石原純との恋愛を指しているのであろう。

 

  わが恋はゆくて知らずて母となりぬわびしいかなや若き魂

                       若山喜志子

太田水穂の紹介で牧水と結婚して、すぐに長男・旅人を出産した。牧水は旅で留守がちだったので、喜志子の恋は手応えのないものだったようだ。

 

  はかなかりしわれに破れし恋ありてただおびえゐき美貌のまへに

                        香川 進

  若き日の恋にも似るか解(げ)しえざるいささか事の胸を離れぬ

                        窪田空穂

*いささか事: ささいな事。

 

  なすな恋 冬なかぞらに愛しきを魂匣(たまばこ)のごと硝子泡だつ

                       山中智恵子

*難解! 特に下句。

 

  かかる戀この人にしてありしかと童顔白髪をまじまじと見つ

                        太田青丘

  恋さへも遂に寂しと思ふとき倚(よ)りかかりゐる樹は夕映えぬ

                        藤岡武雄

 

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白髪