戀よりもあくがれふかくありにしと告ぐべき 吟(さまよ)へる風の一族
斎藤 史
*吟(さまよ)う: うなる。うたう。
恋よりもあこがれたのは「風の一族」であった、という。
酒に灼く胸持つ君を知りてより母に告げ得ぬ暗き恋する
久々湊盈子
ボーリング場の少女の腰細しふり返りざま恋の目をせよ
佐佐木幸綱
ライラックの蕾ひそやかにまだ固しわれらの恋もあをしと思ふ
石川不二子
君に告ぐ五月芍薬今生の苦しい恋をしておったのだ
福島泰樹
罅はしるまでを硝子にもたれゐて被虐の戀のことなど思ふ
江畑 實
戀は火のかをりの林檎漆黒の闇に投げればたちまち夜火事
江畑 實
*「戀は火のかをりの林檎」とは、独特の比喩!