天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

恋(9/13)

  戀よりもあくがれふかくありにしと告ぐべき 吟(さまよ)へる風の一族

                        斎藤 史

*吟(さまよ)う: うなる。うたう。

恋よりもあこがれたのは「風の一族」であった、という。

 

  酒に灼く胸持つ君を知りてより母に告げ得ぬ暗き恋する

                       久々湊盈子

  ボーリング場の少女の腰細しふり返りざま恋の目をせよ

                       佐佐木幸綱

  ライラックの蕾ひそやかにまだ固しわれらの恋もあをしと思ふ

                       石川不二子

  君に告ぐ五月芍薬今生の苦しい恋をしておったのだ

                        福島泰樹

  罅はしるまでを硝子にもたれゐて被虐の戀のことなど思ふ

                        江畑 實

  戀は火のかをりの林檎漆黒の闇に投げればたちまち夜火事

                        江畑 實

*「戀は火のかをりの林檎」とは、独特の比喩!

 

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ライラック