天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

恋(11/13)

  積年のうらみの如く言葉あり生命ひきかへになすものぞ恋

                       大野かね子

  不逢恋(あはぬこひ)逢恋(あふこひ)逢不逢恋(あふてあはぬこひ)ゆめゆめわれをゆめな忘れそ

                        紀野 恵

*おびただしいリフレイン! 珍しい。

 

  あたたかき雨の濡らせる郁子(むべ)の花この子の恋にまだいとまある

                        伊藤一彦

*郁子の花: 郁子は、本州関東以西から琉球まで分布する。葉の小葉の数が、成長に応じて三枚・五枚・七枚と変化することから七五三の縁起木とされている(藤吉正明氏による)。

 

  恋があり革命があり、そう、みんな信じていたね、信じていたさ

                       藤原龍一郎

  長雨(ながめ)せし花のいのちを病む空にくれなゐうすき恋もありなむ

                        前川斎子

*病弱で雨の空をながめてくらす身にも淡い恋があったのだ、という。

 

  公園で夜の電話をかけおれば今きわやかに一本の恋

                        黒岩剛仁

  団々とはた霏々と降るかの日の雪 戦は恋を扼殺したり

                        北沢郁子

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郁子の花