別れを詠む(4/10)
逢ひみてもさらぬ別れのあるものをつれなしとてもなに嘆くらむ
新勅撰集・殷福門院大輔
*逢って愛し合っていても別れはある。それに比べれば、つれないからと言って嘆くなど、笑わせないで、と手厳しい。
なほざりの袖のわかれの一言をはかなく頼むけふの暮かな
新勅撰集・藤原実氏
見てもうし春のわかれの近ければやよひの月の有明の空
続後撰集・藤原光俊
*意味上は、「やよひの月の有明の空」は「見ても憂し」という構文。
わかれ路は渡せるはしもなきものをいかでか常に恋ひわたるべき
拾遺集・源 順
別れ路をげにいかばかり嘆くらむ聞く人さへぞそでは濡れける
金葉集・上東門院
ふるさとを別路におふるくずの葉の秋はくれどもかへる世もなし
増鏡・後鳥羽院
*承久の変で隠岐島に流された後鳥羽上皇のもとに、都から上皇の御身の上を案じて御母七条院が便りをよこされた時に、上皇が詠まれた返歌である。絶望の境地が詠まれている。
このたびは云はむと思ひその事を云はでまたまた別れぬるかな