天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

別れを詠む(6/10)

  淡々と別れしことも快し老いほけぬ間に来てまた会はむ

                      植松寿樹

*年数を経た同窓会での感想もこうしたもの。

 

  かなしげに吾(あ)を見送りしまなざしとおもふべからずなべては過ぎぬ

                      筏井嘉一

  咬みあへるけものならずもさだやかに別れむときはつつしむもなし

                      太田一郎

*「さだやかに」の意味が不明。手元の国語辞書にもネットの辞書にも載っていない。

 作者は別れの時に、慎みもなく相手と抱擁し合ったのだろうか?

 

  いましがた別れ来れる青年へ便(たより)書きをりすでにこほしく

                      大山敏夫

  式はてて 夕冷えまさる若葉の雨 ひとり書斎へ帰るほかなし

                      土岐善麿

  みづからが言ひし言葉にみづからが涙ぐみつつ子らと別れぬ

                      仲田紘基

  はろばろとなりゆく人か海棠の花咲きそめし庭にわかるる

                      岡野弘彦

*「はろばろとなりゆく人」とは、今後は遠く離れて会うこともなくなるであろう人、しかし懐かしくなるであろう年配の人、と想像される。

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海棠の花