天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

諷刺(1/10)

 諷刺(風刺)とは、他のことにかこつけるなどして、社会や人物のあり方を批判的・嘲笑的に言い表すことであり、文芸作品には非常に多い。(辞典から) 短歌の場合、語数が少ないだけに表現の裏を解釈するのに苦労ずる。

 

  そらんじてゐし花言葉つぎつぎに置き忘れ来し月日と思ふ

                       大西民子

  首あらず胴だけとなりし人間の夏くさのなか行くごとく行く

                      前川佐美雄

*何を比喩・諷刺しているのか、解釈が困難な(多様になる)例。時事詠のようでもある。

 

  間引かれしゆゑに一生欠席する学校地獄のおとうとの椅子

                       寺山修司

*学校において間引かれるとは、成績の悪い生徒が別扱いをされることを意味しよう。欠席したくなるのは当然。ちなみに作者は一人っ子であり、弟はいなかった。諷刺の典型。

 

  家伝あしあとまとめて剥ぎて持ちかへる畳屋地獄より来し男

                       寺山修司

  或る夜の昇天の基地またわれの無位の高さの止まり木ひとつ

                       福田栄一

  弦月のつぶれたやうな入江よりなほ淋しきは宰相のかげ

                       内田紀滿

 

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弦月