諷刺(3/10)
櫨の木のもみぢひと葉のこぼれゐて路上しづけき挑発に遇ふ
「薄情」といふ美しき文字(もんじ)をばゼッケンとして再た逢はやも
河野愛子
わが家の楽屋話をふりまきに犬ひきつれて幼子が行く
服部亘志
紫電改などいふ薬ふりかけて朝あさのわが額(ぬか)毛(げ)ととのふ
*紫電改: 第二次世界大戦期における大日本帝国海軍の戦闘機で、紫電の二一型以降を紫電改と称した。育毛剤の名前に転用して薬の効果を宣伝したようだ。
女とは足短くて肩狭く臀太きとぞショウペンハウエル
春日真木子
枯殺剤害なき事を証すると己れ呑みしは下級管理者
永井保夫
*枯殺剤: 除草剤、殺菌殺虫剤のこと。人には害を及ぼさないことを証明しようと、飲んで見せた下級管理者がいたのだ。
飼ひ犬にボスと名付けて家長たる責めを些か振り分けんとす
増渕一正