天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

諷刺(6/10)

  階段をころげ落ちるのも定型であればやっぱりつまらないのだ

                        高瀬一誌

*高瀬一誌は短歌の定型を嫌い、ここにあげた例のような定型崩しをとった。例えば第三句を省略するとか。

 

  新華航空公司が土産にくれし黒き帽子を中国の人皆かぶって降りぬ

                        高瀬一誌

  いっぽんの綱がいま下がって来るぞ地球はまだ生きられるのさ

                        高瀬一誌

  表を上にして入れて下さい眼のない自動販売機なれば

                        高瀬一誌

  もの一つ捨つるに覚悟の要ると言ふミシンのことかわたしのことか

                        大寺龍雄

  マンホールのおもてしずかに灼けいたり<どこでもドア>はどこにもなくて

                        永田和宏

*<どこでもドア>: 、藤子・F・不二雄の漫画『ドラえもん』に登場するひみつ道具だが、マンホールとの関係を書いた場面があるのか知らない。

 

  たぶの樹の洞より蟻が次々と出でてつぶやく一宿一飯一宿一飯

                       岡部桂一郎

*たぶの樹に宿った蟻たちは、そこから樹液などの餌をえたのだ。

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たぶの樹